「Go and Build a Stadium」といってリッチーCEOがニュージーランド協会の要求を断固拒否したときには、イギリスのメディアはその決定におおむね拍手を送りました。
イングランドとニュージーランドは人口や経済規模では差があるにしても、World Rugby内では同格のライバル国。代表チーム同士の比較ならワールドカップ3回優勝のニュージーランドが圧倒しています。
ボーナスは除いて、本給だけで100万NZドルに達したというKieran Read選手のような高給取りも、報酬決定の仕組みが違うとはいえ、サラリーキャップの厳しいイングランドには、今のところいませんしね。
これがニュージーランドが同様の要求を突き付けているアイルランドやウェールズ、スコットランドとなると、あらゆる点でニュージーランドの方が強者です。
その強者が弱者に対して、対戦したかったら金を寄越せと要求しているわけですから、合法的な恐喝といえなくもありません。そういう要求を支持するジャーナリストはニュージーランドにしかいないでしょう。
下の記事はニュージーランド協会のSteve TewCEOが、2011年ワールドカップの終了前後の時期にIRB(当時)に対して、2015年ワールドカップのボイコットをちらつかせて、資金の配分ルールを変えるよう要求したときのもですけどね。
ニュージーランド協会の不当な要求を、正当な理由のもとに却下しただけのイングランド協会が、なぜしみったれといわれなければならないかというのが下の記事。
イングランド協会の決定を支持したメディアが、上のニュースを伝えたときには手のひらを返しました。
この試合の開催によって1千万ポンドの収益を見込んでいたイングランド協会に対して、フィジー協会は15万ポンドの利益分配を要求。というより、この場合はオールブラックスの300万ポンドとは桁違いの控えめな「お願い」でしたが、イングランドは利益分配試合には応じない原則的な立場から、これも断固拒否しました。
しかし、そこは礼儀正しい英国紳士ですから、利益分配に替わるGoodwill Gesture、友好の印として支払いに応じたというニュースです。半額の7万5千ポンドに値切ったうえで、ですけどね(笑)。
フィジー協会は受け取った7万5千ポンドを原資に、出場した選手たちに1試合あたり400ポンドの手当を支給しましたが、この試合に出場していたフィジアンは実はもう二人いました。
ひとりは昨日紹介したSemesa Rokoduguni選手で、もうひとりは「
期待の新星の選出がNGに」などでも取り上げたNathan Hughs((写真上)。イングランド代表として出場した彼らが受け取った出場ボーナスは、この試合だけでそれぞれ2万2千ポンド。
Paupers and Princesはもちろん、乞食と王子。フィジーとイングランドの選手たちの苦悩がラグビー界の不正を照らし出すというわけです。
この試合はニュージーランドが持ち掛けた当事国の意向だけで決まる、11月テストの第4の試合ではなく、World Rugbyもマッチメークに関与する通常のテストマッチ。フィジーの15万ポンドの利益分配のお願いも、World Rugbyの意向を受けたものである可能性が大きいんですが、イングランド協会は、
「フィジーが金銭的に苦しいのは知っているが、それを助けるのは我々の義務ではない。
と言い放ちました。
「5月か6月にさかのぼるが、我々はこの問題に関しての、可能な貢献について話し合った末に、Goodwill Gestureを支払うことで合意した。我々は『親切な貢献に感謝する』というメモも、フィジーから受け取っている。
「フィジー協会の資金(不足)については、主に彼ら自身とWorld Rugbyの問題だ。我々は他の国の協会が何をし、何をしていないのかについて、一切関知してしない。確か去年にはワールドカップがここイングランドで開催され、World Rugbyはフィジーのような国を支援するための、莫大な利益を生み出したはずだが。
去年までとは違って、そのWorld Rugbyの会長に、イングランド協会の前会長だったBill Beaumont氏が就任していて、15万ドルのお願いは、彼の意向も含まれたものだったんですが、そんなことは関係ありませんでした。
苦悩は400ポンドで命さえかけたテストマッチに出なければならないフィジー代表の選手だけにあるのではなく、2万2千ポンドを受け取るイングランド代表選手、とりわけフィジアン2選手の側にもあります。とくにロゴヅグニ選手とは違って、フィジー在住当時から将来を嘱望されていたNathan Hughs選手の場合はなおさらです。
報道によって時の人になってしまったヒューズ選手は、決断は難しいものではなかったとして
「フィジーとイングランドの両方から代表招集の話があったとき、妻に尋ねたんだ。フィジーを選べば私はここにはいなくなるし、イングランドを選べばここにいると。
と語っているんですが、奥さんの決断に責任を転嫁しちゃっている時点で、それなりの葛藤があったことをうかがわせます。というか、それが当たり前です。
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